
沖縄に移り住んではや10年が過ぎた
当時の観光客数は400万人を超えた頃。バブル後のリゾートブームに乗るかたちで沖縄は内外から脚光をあびたが、それでもまだ「移住ブーム」という言葉はなかったように思う。「移住」という言葉が一人歩きするのは2003年、『ちゅらさん』が高視聴率をあげた頃からだろう。
この年、観光客数も一気に500万人を突破。県外からの転入者も2万5千人にのぼり、文字通り、沖縄は沸騰するような移住ブームを迎え、98年から03年の5年間に人口が毎年2500人ずつ増えるような時代を迎える。
那覇市の人口の伸び率が日本一だった年もあり、沖縄は文字通り、国内最大の移住地として沸騰するような人気を集めた。
著名な芸能人や文化人が沖縄に移り住むのもこの頃で、なんというか、日本国中、猫も杓子も沖縄と騒いでいたような気がしてならなかった。おかげで自分が書いた本も局地的にバカ売れしたりもしたが、ただこうなると、いずれは弊害が起こるだろうなあとは思っていたのだ。
どういうことかというと、沖縄の現実をあまりに知らずに、ふいに住み着くものたちが目立つようになったのだ。
もっとも暮らしにくい土地
周知の通り、沖縄の失業率は日本一高い。労働時間の長さもトップクラスに加えて、起業の廃業率もワーストクラス。ふつうに考えれば最も暮らしにくい土地なのである。
にもかかわらず、好まれない移住者がどんどん増加している。なかでももっとも問題なのが、住民票を移さずに沖縄に定住している連中。いま、こういう市民とはいえない人たちがうなぎのぼりで増えているのである。その最たる島がもともと移住地として人気の高かった石垣島だ。
こういう住民票をもたない人を幽霊人口というのだが、石垣島の人口約4万7000人のうちの約1割、なんと5000?8000人が住民登録や戸籍のない幽霊人口だというのである。
市民ではない彼らは税金を払っていない「住民」である。たとえば、ゴミの収集や水道水の使用は住民税でまかなわれているが、彼らは無料で自分たちのゴミを収集してもらい、タダで水道の水を使っているのである。しかも、なかにはビーチでテントを張って何か月も住み着いている連中もいるというから事態はいくところまでいっているといっていいだろう。
住民同士の対立構造が生まれるおそれ
こういう異常な事態を肩代わりしているのは誰かといえば、いうまでもない。元々の住民たちである。そのため、このままいけば、住民同士の対立構造が生まれるおそれもあるというのである。
僕が移住した頃は移住に関する情報や本もなく、まさに手探りの状態で人的ネットワークを作り、なにかこう沖縄にお邪魔させていただいているという感が抜けなかったが、いまはそれほど気負いをもって移住する人は多くなさそうだ。いずれにせよ、このような状態が続けば島はすさんでしまうに違いない。
いま、冗談のような話が仲間の間に起こっている。もうこうなったら、島に入った時点で預かり金を徴収したらどうかというものだ。島外者から入島時に、とりあえず一定の預かり金を徴収し、島から出る際に、滞在日数分の金額を差し引いて返す。
温泉に入るときに払う「入湯税」ならぬ「入島税」というわけだが、ともかくも、移住ブームの歪みは、そういう意見を出させるところまできている。モラルを問われているのは、あくまでもよそから来た人であることを肝に銘じたい。
1958年大阪市此花区生れのウチナーンチュ2世作家で沖縄大学講師。
著書に『住まなきゃわからない沖縄』『爆笑
沖縄凸凹夫婦』『沖縄の人だけが食べている』『沖縄チャンプラ亭』『沖縄大衆食堂』など多数。
新刊、仲村清司の「独断偏見!!沖縄とっておきの隠れ家」も好評発売中。
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